直葬を勤めて

チベット僧院の六道輪廻図・ティクセモネストリー
チベット僧院の六道輪廻図・ティクセモネストリー

ご依頼を受け、葬儀をお勤めしました。

世間でいわゆる直葬、と呼ばれる形式で

俗名のまま、火葬場の炉に入棺する前で

お経を唱えてご供養するというものです。

 

直葬をされる事情は、様々です。

故人との関係や、経済的な事など

色々とあるのでしょう。

火葬場の都合もあるので、短い読経に

ならざるを得ないのですが、

正式な葬儀と変わらぬ真心をこめて

ご供養させて頂きました。

 

故人は80歳のお母様で、喪主は

嫁いだ娘さんでした。

余命宣告を受けられていたそうで

ある程度の覚悟は出来ていたそうですが、

臨終を看取れなかったと悲しんで

おられました。

 

数人の御身内だけで入棺し、

読経の時間に制限がある中で

お題目様だけはご一緒に

唱えていただきました。

 

読経が終わり、炉前から振り返ると

皆さん、強く涙されておりました。

他人には窺い知れない色々な

想いがあるのだと思いました。

そして、皆さんのこの涙が一番の

ご供養とも感じ、たとえ立派な祭壇で

大勢に見送られずとも、故人様は

感謝されておられるのでは、

と思いました。

 

喪主様やご家族に丁寧に御礼を述べられ、

控え室に戻った後、私自身、

心が洗われた気持ちで

お勤めさせて頂き

本当に良かったと感謝しました。

  

檀家を持たない私は、

滅多に葬儀を勤めることが

ないのですが、それだけに

人生の最後を締めくくり

仏様の元へ導き入れる葬儀の大切さを

再認識させていただきました。