伝承ごと

今から約700年前の鎌倉時代

日蓮聖人30歳の頃に、

生きた不動明王・愛染明王を感得(実際に我が眼で見ること)

した際、ご自身でスケッチされたものです。

愛染明王の月輪にある光物は

コロナでしょう。

絵図の一つ一つに

興味深い意味が

示されているのですが

略します。

 

感得は月蝕・日蝕の時だったそうですが、

事実、この建長6年には月蝕の祈祷が

各寺で行われたと歴史書『吾妻鏡』にも

記されています。

 

そして、この絵図と

ほぼ同じような構成で

他宗の僧侶が感得した図が

京都三井の園城寺や

宇治の三室戸寺に残っているのです。

 

それってパクリでは?

とか、「生きた不動明王」を見たなんて

幻覚じゃないの?と

現代の我々は勘ぐるかも

しれません。

 

しかし、単なる幻覚か

信仰上の思い込みで

時代を超えて、多くの方が

同じような構成の不動明王を見るでしょうか?

 

比叡山に

『生身不動法』なる伝承ごとがあります。

生きた不動明王を感得する方法が

日時・作法・読経・心構え・修行日数・注意点など

詳細に記述され、それを見事やり遂げれば

見ることができると記されています。

 

それは、師から弟子へ脈々と

受け継がれる秘法であり、

不動明王の伝承も、

日蓮聖人が第23代目と記されています。

約30年に一人の割合で

この秘法を成就しているようですから

かなりの難行です。

 

ちなみに日蓮聖人は

超人的な記憶力増強の秘法

「虚空蔵求聞持法」も成就されています。

 

現代でも行われている秘法で

その一部を見たことがありますが、

閉所恐怖になりそうな狭い密室で

100日間真言を唱え続ける行です。

 

日蓮聖人が膨大な量の

お経や書物を読破し、

全てをマスターされた礎には、

このような能力開発があったといえます。

 

この不動・愛染明王という

仏教の代表的守護神が

「生の姿」で眼前に現れ、

日蓮聖人に大きな衝撃と感動を与えたことは

確かでしょう。

その証拠に、

生涯に亘りお書きになった

曼荼羅本尊の中で、不動・愛染明王だけは

梵字のまま、左右に大きく存在感を示しています。

苦難の布教の中、陰に陽に

二神の守護を実感されたに違いありません。

 

そして秘法に唯一許す通り、

「生死の苦しみを離れる」お守りとして

この絵図を両親に贈り、その後

鎌倉の都会に出て布教を開始したと想像されます。

 

以上の興味深い検証を

過日、碩学の御上人様より学びました。

これも貴重な伝承です。

 

師から弟子へ、

先生から生徒へ、

親から子へ、

現代から未来へ、

無くしてはならない

伝承ごとが日本には

沢山あると感じています。